2012年7月3日火曜日

「彼岸過迄 夏目漱石」読了

彼岸過迄 夏目漱石 新潮文庫」読了.

帯に”現代の愛の不毛はこの作品からはじまった.自意識が強く内省的な男と自由で積極的な女.漱石の男女観を結実させた恋愛小説”とあるがこの作品は不毛の愛ではない.

養子であることを知らずに普通に育てられた須永.しかし,何となく自分自身の存在に違和感を感じ,でも自分ではどうしてよいかわからないでいる.

ホントは弱い,でもそれを知られたくないので,精一杯に自分を演じている千代子.彼らの不器用な恋愛のように読めた.

それを外から観ることしかできない田口.その田口を通じて二人の関係を知りえた読み手.そして,最後は呪縛から解き放たれた須永.この先の須永と千代子の関係がどうなったのか知りたいと思った.

ところで,この作品でも松本の幼子,宵子が死ぬ.須永は継子.漱石の生い立ちが作品の動機か.

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