2013年10月3日木曜日

「アンダーグラウンド 村上春樹」読了


アンダーグラウンド 村上春樹 講談社文庫」読了.

1995年3月20日に起きた地下鉄サリン事件の関係者62人のインタビューを記録したものである.証言はサリンのターゲットになった路線ごとに分類されている.これを読むと,事件の酷さ,そして,被害者にとってはまだ進行形の事件であることに改めて気づく.

最後は,サリンで亡くなった和田栄二さんの両親と妻のインタビューである.最後のこのインタビューを読んでいると込み上げてくるものがあった.涙も一緒にである.

最後の章「目印のない悪夢」は,取材を通じて村上が思ったこと,考えたことが書かれている.東日本大震災と福島第一原発事故の記憶を持って最終章を読むと,政府と日本の組織は過去から何も学んでいないことを知り,がく然とした.

村上は書いている.”当日(サリン事件)発生した数多くの過失の原因や責任や,それに至った経緯や,またそれらの過失によって引き起こされた結果の実態がいまだに情報として十分に公開されていないという事実である.言い換えれば,「過失を外に向かって明確にしたがらない」日本の組織の体質である.「身内の恥はさらさない」というわけだ....”

なんか3.11以降の政府や東電の対応を思い出す.すべてに遅く,あいまいで,役に立たない.何も解決できないのが政府だ.

村上はこのような日本の組織の体質は帝国陸軍の体質となんら変わっていないという.つまり,政府,日本の組織は何も学ばず,進歩すらしていないのだ.

3.11の記憶に新しい今,読んでよかったと思う.

このような本を残してくれた村上春樹に感謝する.

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